「演劇を企業研修に取り入れる」と聞いて、最初に何を思いましたか?

「面白そう」と思った方もいれば、「うちの社員は演技なんてできない」「そういうキャラじゃない」と感じた方もいるかもしれません。後者のほうが、むしろ正直な反応だと思います。

でも、ここで少し立ち止まってほしいのです。演劇の技法と演技は、まったく別のものです。この違いを理解したとき、「なぜ演劇コミュニケーション研修がビジネスの現場で機能するのか」がはっきり見えてきます。

私が演劇に関わって22年。舞台俳優としての経験と、企業研修の現場で積み重ねてきた実践から、今日はその「なぜ」をお話ししたいと思います。

「演劇の技法」と「演技」は全く違う

誤解の根っこはここにあります。「演劇研修=演技を学ぶもの」という思い込みです。

The First Passionの企業研修プログラムは、演技を教えるものではありません。キャラクターを演じたり、台詞を覚えたりする必要はまったくない。

では何をするのか。一言で言えば、「伝わる出力」を体験するワークです。

声の出し方、身体の使い方、場に対する意識の向け方——これらは俳優だけのものではありません。もともとは「人が人に何かを伝えるとき、どうすれば届くのか」という問いへの、長年にわたる探求から生まれた技術です。

普通のコミュニケーション研修やプレゼン研修は、スライドの構成・話す内容・論理の組み立て方など、外側を整えることに集中しがちです。言いたいことは整理できた。でも、なぜか伝わらない——そういう経験はありませんか?

演劇の技法が取り組むのはその手前です。声、表情、身体、意識。内側から変えていくアプローチだからこそ、「何を言うか」よりも「どう伝わるか」が変わります。

「受講後、自分の話し方がどう変わったかより、相手の反応が変わったことに驚いた」
— 参加者の声

なぜ演劇が5,000年間続いているのか

プレゼン研修というジャンルが生まれたのは、せいぜい数十年前のことです。でも演劇の歴史は、5,000年以上続いています。

古代ギリシャの野外劇場で、数千人の観客に声を届けた俳優たち。戯曲の言葉が何世紀もかけて洗練されていった過程。観客の感情を動かすための、身体表現の体系化。これだけの時間をかけて検証・改良され続けた「伝わる技術」の蓄積が、演劇のメソッドの中に詰まっています。

5,000年というのは単なるロマンではありません。それだけの期間、人に検証され、使われ続けてきたということ。効果があるから残った、ということです。

「なんとなく声を大きくしてみる」「ゆっくり話してみる」——多くのビジネスパーソンが自己流でやっていることを、演劇の世界では体系的に言語化し、再現可能な形にしてきました。「声の五要素」「間の使い方」「身体の開き方」といった技術として。

企業研修に演劇の技法を持ち込むというのは、この膨大な知的遺産をビジネスの現場に転用することです。5,000年分の検証済みメソッドを、30名の社員研修で使わない手はないと思いませんか。

企業研修で演劇技法が効く3つの理由

1. 「頭でわかる」ではなく「身体が覚える」

コミュニケーション研修の多くは、インプット型です。講師が話を聞かせ、スライドを見せ、ワークシートに書かせる。研修の場では「なるほど」と思えても、翌週の会議では元の話し方に戻っている——そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。

演劇の稽古はそうではありません。知識として覚えるのではなく、繰り返すことで身体に染み込ませるのが稽古の本質です。ウォームアップから始まり、ワークを重ね、フィードバックを受けてまたやってみる。この「体験の積み重ね」が、日常の場面で自然と出てくる行動変容につながります。

2. 「個」と「場」の両方を育てる

舞台の上では、個の技術だけでは成立しません。相手の言葉を受け取り、返し、場の空気を読む。演劇はそもそも「関係性の中で生まれるもの」です。

だから演劇を使ったコミュニケーション研修は、個人の表現力を鍛えながら、同時にチーム全体の対話の質を上げることができます。「自分が話せるようになる」と「チームとして機能するようになる」が同時に起きる、というのが他の研修との大きな違いです。

3. 安全に「失敗できる場」をつくる

ワークショップ形式の研修には、もう一つ重要な機能があります。それは、失敗しても大丈夫な場所を確保できること。

実際のプレゼンや会議で「声の出し方を変えてみよう」と試みるのは、リスクが高い。うまくいかなかったとき、評価に直結してしまうから。でも研修という「フィクションの場」の中なら、思い切って試せます。試して、崩れて、また試す。その繰り返しの中でしか、本物の変化は起きません。

演劇の稽古場は、プロの俳優にとってもそういう場所です。本番前に何度も崩して、また立て直す。その繰り返しがあってはじめて、本番で使える技術になる。

The First Passionの企業研修が変える4つの領域

The First Passionの企業研修プログラムが扱うのは、次の4つの領域です。

  • 自己理解 — 自分の声・身体・クセを客観的に把握する
  • 他者理解 — 相手の状態を読み取り、受け取る力を育てる
  • 自己表現 — 思っていることを、伝わる形で出力する
  • コミュニケーション — 一方通行ではなく、対話として機能させる

これらは、プレゼン・営業・会議・面談・採用面接——ほぼすべてのビジネスシーンで求められる能力です。

演劇の言葉で言えば「三つの輪」という概念があります。第一の輪(自分の内側)、第二の輪(目の前の一人に届ける)、第三の輪(空間全体に広げる)。プレゼンで言えば、資料だけを見て話しているうちは第一の輪にとどまっている状態。聴衆一人ひとりの顔を見て、場全体を感じながら話せるようになったとき、はじめて第三の輪が開きます。

舞台で「第四の壁を破る」と表現するものも、ビジネスに翻訳すれば「一方向の発信から双方向の対話へ移行する」こと。演劇の専門用語は、実はすべてビジネスの現場にそのまま対応しています。

「自分が見失っていた自信を取り戻せた気がします。表現することへの怖さが、少しほぐれた」
— 受講者の声

「見失っていた自信を取り戻す」という言葉が印象的でした。スキルが向上した、というより、もともと自分の中にあったものを引き出せた、という感覚。演劇の技法が目指しているのは、まさにそこです。

「自分の原点を言語化・表現できた」という受講者の言葉もあります。コミュニケーション力というのは、外から貼り付けるものではなく、内側から引き出すもの。その引き出し方を、演劇は5,000年かけて磨いてきました。

企業研修で演劇コミュニケーション研修を検討している方は、ぜひ一度、詳細をご覧ください。「演技」ではなく「伝わる出力」を体験するプログラムが、どんな変化をもたらすか——言葉だけでは伝えきれない部分が、実際にワークの中で見えてきます。